まだまだ時間までは余裕がある。
信じられないかもしれないが、僕はそれほど仕事をするのがおっくうだった訳じゃあなかった。ただそれ以前の、職探しやらがちょっとばかり面倒だったし、中途半端にひらけた所でなおかつ学生街。働き手は毎朝毎夕、僕の家の前を歩いている。要するに、働き口がないか、あってもろくなもんじゃなかった。
そんな折、前々から目を付けていた、歩いて三分とかからないコンビニに、求人広告が出ているのを発見して、僕はそこに働く友人に冗談交じりに「募集してるね、働いてみようかな」と漏らした次の日、スタバラテを持ってレジへ向かうと、友人の隣に店長の姿。
「働きたいんなら面接するから、履歴書持って来てよ」
僕の理由はいつだってそんなもんなのだ。


今日で研修一週間目と言った所だろうか。コンビニと言えど、レジのあっち側とこっち側じゃえらい違いだ。大手チェーンだけあって、業務は殆ど確認と登録、後は単純作業の繰り返しみたいな物だが、開店して一年で別店舗を持つ程の人気店、ともかく客の回転が恐ろしい。
お相手は先に書いた学生さん方。タバコにパン、サンドウィッチに弁当。ああ、フライドチキンですね、少々お待ちください。おでんですか、かしこまりました。ありゃ、フライドチキン終わっちゃってる。揚げなおさないと……いらっしゃいませーこんにちはー。え、宅急便ですか? それはまだちょっと習ってな……いらっしゃいませ、こんにちは! マネージャー! 店長ー!
と、そんな感じの愉快痛快棒立ちライフを満喫している。働くのも、存外に良いものだ。ただ、単純作業中とひたすら来客を待っている時間は、やたらに思索をしてしまうのが問題と言えば問題なのだけれど。
仕事仲間も面白い人ばかり。自給がちょっと安いのは、この際気にしないでおこう。仕事がはかどれば昇給もあるみたいだし、まずは慣れなくちゃならない。そうそう、こっち側に来て初めて知った事だけれど、コンビニ店員は凄くお客を観察しているよ。FBIのプロファイラーも真っ青、入店と同時にあだ名を付けられるなんてのはザラ。何故って、僕が研修で最初に習ったのがそれなんだもの。そんなんで良いんですかマネージャー? あ、良いんですか、そうですか……。