音沙汰なしの数ヶ月、何をしたかといえば仕事をやめピザを喰らい眼を閉じ耳を塞ぎ口を噤んだ人間であろうと試みたのだけど、今頃になって生活が詰んだ。
いやまだギリギリセーフ寄りのアウト気味なのでどうにかなるにはなるけど公共料金その他色々を払うと来月分の生活費がない。一円もない。一銭もない。何もない。
日雇いで凌ぐか? とりあえず仕事見つけないとよくない。交通費がかかる。やはり詰んでるこれはまずい。
しかし面白がってもいる。いつもの事ながら、自分の事のはずなのに現実感がない。こっち側に自分がいない。

「ああ、これは大変だね」

他人事のように誰かが言う。そうとも、肉も、血も、熱も、冷たさも、思考も感情も、ただ一つの痛みすら、何も、何も信じられないのだ。
これが僕の望んだことだ。何一つ得るものなく、失われるものなく、贖われることもない。純に真なる偉大なる虚無への一歩だ。
時が全てを与え、奪っていくのを待つ他に何が出来よう。よくあることの一つに仕分けされ、誰にも意識されなくなり、この肉が腐り土か風になって、そうして漸く僕は自分だけの、そうとも、自分だけの生を得るのだ。

「なのに自分を残そうとするのは何故だい」

うるさい、黙れ。