デジタルDJ、PCDJとまあ色んな言い方はあるわけだけども、その辺りについて思うこと。


昔ながらのアナログDJなら、別々の会社、異なる機材であっても、繋がりさえすれば使えたし、PCのハードよろしく使いまわしももちろん可能だった。それはVinylとハードだけで完結する、システムとしてスマートな構成だったのも理由になる。
ところがデジタル、PCが絡んでくると、どうしてもソフトウェアとの整合性という問題が出てくる。これは今のFPS、ゲーミングハード、もっと広げるとPCハード全体でもいえる事なのだけども、各社が独自仕様や囲い込み商法に躍起になるあまりに、そのツール一つ一つの汎用性が失われつつあるという問題。
ある会社の製品だけで固めれば、その会社の提供するスペックを十全に使うことは出来る。でも、もし別の会社の機能が欲しい場合……そういう時に往々にして立ち塞がるのは、相性や認識するかしないかという使う以前の問題であることが多い。
僕がPCDJについて学ぶ過程で最も危惧していたのはこの部分で、つまりソフトウェアがいかに進化してもハードが対応していなければその機能を発揮することはあたわず、その逆もまた然りということ。この点でVestaxの新製品は強くソフトウェアとハードを結びつけることで解決した様に見える。が、それは先に述べた一つの会社やそのグループの提供するスペックを発揮できるまでに留まり、その先は固く閉ざされている。一口に言えば、あるツール、ソフトを選んだ時点でそれ以外の選択肢が失われてしまう。継続的にそれが発展提供されない限り、PCDJを志す者、行う者は、互換性のないそれらに対して多大な出費を迫られる。
VCI-100、VCM-100の段階ではそうではなかった。各社製品のテンプレートが用意されていた*1VCI-100もそうだし、MIXという行為に必要な最小限の構成であるVCM-100も、念頭におかれていたのは汎用性であり、使うソフトがMIDIインターフェースに対応してさえいれば「使いまわす」ことが可能だった。ALLEN&HEATHもその方向性であり、XONExDシリーズはどれも様々なソフトに対応できるよう作られている。
が、汎用性を求める事で犠牲になったのは繊細なコントロールだったようだ。VCI-300ではソフトと強く結びつくことで、MIDIデータの解像度上問題だったこの点をクリアしているらしい。これは発展の一つとして大いに歓迎すべきことだし、賞賛されてしかるべきだ。
ただ、本当にそれでいいのか、とも思う。間違いなくその行き着く先は単独のソフト、単独のツールであり、それ以外の全てを排除するものでしかない。先にも述べたように、このやり方ではPCDJをやる上である会社、ある製品にとことん傾倒せざるを得ないことを示している。
それで得られるものが快適な操作性やフレキシブルな運用であるなら問題はない。が、既に各社異なった方針でリリースされ始めたソフト、ハードの波はちょっとした混沌を招いている。アナログDJの代替、あるいは進化の一系統としてPCDJがもてはやされつつある今、望むべくは全体としての柔軟さなのではないだろうか。
なんてことを杞憂してみるのだが、まだプレリリースの段階だし、VCI-100が出てきた当時もそんな話が色々あって今に至る訳で、業界全体がいまだ手探り段階である以上多くは望めない。そもそもプロでもなければクラブで回したことすらない者が言うべきことでもないのかもしれないが、趣味として楽しむことすら出来ないもので、果たして世で回るのかなんて懸念もある。
大手のDJユースメーカーも段々と参入しつつあるようだから、今後の展開をじっと待つしかないようだ。個人的にVestaxには強い好感を持っているので、どうかコケたりしないで欲しい。こんな素敵なデザインでハードを作ってくれる所はALLEN&HEATHとKORGくらいなんだもの。応援だってしたくなる。

*1:らしい、というのも、発売から今に至るまで発表はあっても売り出されていないから