射す陽とは裏腹に、鋭くなった風に追われる様に歩く。レンズの切り取った正しい様に見える景色は確かに冬の情景で、また一年が過ぎようとしているのだと、おぼろ気に感じて。そこにあるのは一抹の空虚、そして、喪失感。
喧騒の空気の残る部屋に戻り、その騒動の跡もそのままに、乱暴に横になって、思う。
――色々な事が、思われる。いつも思っていることも、思われなければなかったのに、いつの間にか忘れられていたことも。
そうして、瞳を閉じる。このまま眼が覚めなければいいのに、と、まどろみの沼の中で思いながら。