お客様から桃を貰う。やたらに硬くて、小ぶりな桃。「この間は、ありがとう」だってさ。
なにしろそれがお仕事、そしてこれを貰ってお客様の顔を立てるのもお仕事。食べ物やらを売ってるのはお店であって、僕はサービスを売る一店員。チップを下さるというのなら、甘んじて受け入れるのがボーイの務め。それ以外のもんは、務めには必要ない。あればあるだけ余計ってもんだ。画面の向こうどころか、目の前に立ってる青っ白い痩せた棒切れみたいな野郎が人間だって事すら、理解不可能な奴だっている。心あれば、思いあれば、それらに慰めものにされて、後に残るのはぼろ雑巾みたいになった残りカスだけ。


それにしても硬い。林檎だってもう少しもろいものだ。だけれど、とても、甘い。