「大切に使って、って言ったじゃない」
最初に「どうして」、次に「ああ、そうか」、僕の思考は二段階目で停止して、生きなければならない理由を見失う。
世間一般的に考えて、今の僕がおかれている状況は、最悪の一言に尽きる。住所、仕事、学歴、資格、スキル、コネ、未来――いずれもなし。こんな状況では、愛想を尽かされて当たり前で、嫌われて当然。自然、先の言葉はそれ故に出てきたのだろう。借り受けたお金がどんなものか想像もせず、これを湯水のように使い、それを何の気にもかけない男だと、そう思われたのだ。黒い絶望が目の前を埋め尽くす。
そんな馬鹿なことがあるか。そんな恥知らずな自分可愛さに生きられるのならば、こんな事態に自ら堕ちるものか。もっとしたたかに、もっと浅ましく、未だ家を出ることもなく、ただ哀れみと惰性に打算でもって享受される寄生生活に甘んじていただろう。ことここに至った理由の全ては、自ら死を選ばぬ為だ。あなたに死を負わせぬ為だ。
あなたにそんな風に思われるくらいなら。
あなたにそんな風に迷惑しかかけられないなら。


僕の生存に意味はない。