酷い目眩だった。身体中の力が抜け、視界が白く、すぐに闇に変わる。きいん、と高周波のような音に混じって、血が流れる音が聞こえる。いや、何も聞こえないのかもしれない。脈動も何もなく、ただ、放送終了後のTVのようなノイズ。

昔から体だけは、頑丈な部類に入ったと思う。だけは、というのは、精神的な面はそうでなく、そして体はそちらに往々にして引っ張られるということだ。どんなに休養や栄養をとったところで、突然体が僕の一部でなくなるなんてことは、よくあった。病は気から、というやつだ。

それでも、それなりにこの体と頭とは長い付き合いで、どれくらい動かせば言うことを聞かなくなるか、なんてことは、分かって来たつもりだった。自己管理なんて高尚なものではない。そうした気を払っていても、どうにもならない時はある。が、今度は何の予兆も、心当たりもない。全く突然、マシンの電源が落ちるように、意識が消え失せた。